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Trusted Testerに取り組んだ話


この記事は アクセシビリティ Advent Calendar 2022 の4日目の記事です。

※本当は、この記事を公開するまでに認定試験に合格したかったのですが、時間が間に合わずまだ最後の試験を残したままです!合格して認定証が発行されたら改めてご報告したいと思います。

最近ウェブアクセシビリティを学び始めたアラサーマークアップエンジニアです。

アクセシビリティを学ぼうと思った時に、アクセシビリティ専門の資格のようなものはないのかなと思い色々調べてみました。(資格が欲しいわけではなく、体系的に学びたいという気持ち)

日本だとアクセシビリティ検査技術者検定ICTアクセシビリティアドバイザー認定資格という2つがあるのを知りました。

どちらも内容的に、ウェブアクセシビリティを学べそうでこれでもいいかなと思ったのですが、ミツエーリンクスさんの以下の記事を拝見してTrusted Testerを知りました。

無料かつ体系的に学べそう!と感じたので、Trusted Testerにチャレンジすることを決めて取り組んでみました。

※ミツエーリンクスさんの記事に、Trusted Testerの詳細な説明がありますので本記事ではそこまで詳しく書いていません。体験記としてお読みください。

Trusted Testerとは

米国リハビリテーション508条(Section 508)のウェブアクセシビリティ要件に適合しているかを評価するためのプロセスです。WCAGとは異なる評価方法になっています。

Trusted Testerの進め方

内容としては、以下のような順番で進めていく構成になっています。

  • Section 508がなぜ重要なのか
    • 2時間もあればで完了できる内容で、Section 508の基本的なことを学びます。
  • Section 508のWeb基準を学ぶ
    • 3-4時間ほどで完了できる内容で、Section 508規格がWebコンテンツや電子機器にどのように適用されるのかを学びます。
  • Trusted Testerで使用するツールの説明
    • テストで使う支援ツールの使い方を学びます。(使用方法だけなので30分もあれば終わります。)
  • Trusted Testerのトレーニング
    • 後述します。
  • 模擬試験
    • 認証試験前の模擬試験になっていて、30日以内に3回受けることができ、90%以上の正解率だと認証試験を受けることができます。
  • 認証試験
    • 3日以内に3回受けることができ、90%以上の正解率だと認定証が発行されます。

模擬試験と認証試験以外は、章ごとに簡単な理解度テストがあります。

Trusted Testerのトレーニング

Trusted Testerのテスト項目の達成基準をそれぞれ理解し、実際にページを見ながらテスト項目に適合しているかどうかを確認する演習を行います。Trusted Testerでは、予め決められた20個の項目があります。1項目の中には複数のテストプロセスが存在するものもあれば、1つだけのものもあります。特に「5: Forms」の項目は、フォーム周りのテストということもあり考慮する点が多いことから、テストする項目も多めです。

ちなみにこのトレーニングを全部受講完了できる目安の時間は60〜80時間です。自分も正確には図っていないですが、80時間近く掛かっていると思います。

テスト基準を確認するために使われるツールとしてANDIがあります。ANDIを使うことでHTML、CSSなどのソースコードを、直接確認することなくテストを行うことができます。

例えば、「13: Sensory Characteristics and Contrast」という項目ではコントラスト比のチェックを行うのですが、ANDIを使って自分のサイトで試すと以下のような表示になります。(このテストは、WCAGで言うとWCAG SC 1.4.3 Contrast (minimum) に該当します。)

ANDIの使い方

この項目のテスト基準は、以下のようになっています。

If any of the following is TRUE, then the Test Condition is TRUE and the content PASSES:

  1. The contrast between the text and its background is equal to or greater than the minimum required contrast ratio identified in the ANDI Contrast Ratio output, OR
  2. If the text is an image of text, the contrast between the image of text and its background is equal to or greater than 4.5:1 as identified using the Colour Contrast Analyser.

上記の通り、テスト基準をチェックしていきます。今回の場合は、1でANDIに表示されている「Contrast Ratio」が「PASS」となっており、コンストラクト比の基準を満たしているため「PASS(合格)」です。

このようにテスト結果に問題なければ、「PASS(合格)」となります。問題がある場合は、「FAIL(不合格)」としてチェックします。テストが基準対象外だったものに関しては、「DNA」としてチェックします。例えば「5: Forms」というフォーム要素に関するテスト基準がありますが、テストするページ内にフォーム要素がない場合などは、このテスト基準は「DNA」としてチェックします。

模擬試験

予め用意された3つのページをTrusted Testerの20項目に適合しているかをチェックしていくテストです。項目数が単純に3ページ×20項目で60と更に複数のテストプロセスがある項目もあるので、相当な数のテストをすることになります。一応途中でSAVEはできるので再開はできますが、予め時間に余裕を持って挑まないと終わりません。(自分は1回目のテストで6時間ほど掛かりました…)

一度採点して90%を超えていない場合は、再試験になるのですが、正解した箇所については、再度テストすることはなく間違った箇所のみ再試験する形になります。3回まで採点が可能で、3回目で90%まで達成していないとリセットされ、最初からやり直しになってしまいます。テストの難易度はそこまで高くなく、英語の理解力さえあれば、一つ一つ確実にテストしていけば問題なく合格できます。自分は、2回目で90%を超えて合格になりましたが英語の読み間違いなどでミスをしている箇所が多く翻訳に頼っていたのですが、苦労しました。

やってみてどうだったか

認定試験をまだ残していますが、取り組んだ前と後でアクセシビリティについて少し自信がついたなと感じました。先程も紹介した実際のページを開いてテストしていくプロセスが、自分の中でとてもいい経験になりました。プログラミングと一緒で手を動かしながら理解していくのが、一番理解が深まることを改めて感じました。(QAエンジニアのスキルも挙がった気がします。)

Trusted Testerは英語ですが、DeepL様の力を借りることで理解はできると思います。本来であれば、原文で取り組んだ方が良いとは思うのですが、自分は英語が圧倒的にできませんので翻訳に頼りました。

無料のコンテンツですが、他にもMDNのアクセシビリティや、最近では、GoogleからもLearn Accessibilityが登場したりとコンテンツが充実してきている印象なので、このあたりも時間があれば取り組みたいと思います。

少し自信が付いたことで、普段の業務でも生かせる所は生かしていきたいと思いました。普段デザインを確認すると「自分だったらこうマークアップする」というのがありますが、ここにアクセシビリティの観点を加えていきたいです。WCAG2.1の仕様を、以前社内で開催された輪読会を通して「A、AA」までは読んだのですが、ほとんど忘れているのでこれを機にまた改めて復習しつつ、WAI-ARIAの正しい設定ができるように普段のコーディングから意識していきたいと思います。